
非常食セットは「人数×日数」から逆算する
非常食セットは、何となく人気商品を買えば安心というものではありません。まずは自宅や職場の「人数×必要日数」を決め、そこから主食・副菜・水・衛生用品まで逆算して組み立てるのが基本です。行政が目安とする最低3日分、可能なら7日分を想定し、在宅避難を前提に温め・給水の手段も一緒に確保しておくと安心です。
主食・副菜・間食のバランスを整える
白飯やアルファ米、パン缶などの主食だけに偏ると、途中で食欲が落ちたり栄養が不足します。汁物・おかず・甘味を必ず混ぜ、塩分とカロリーを確保しながら飽きない構成にしましょう。甘味はメンタル面の支えにもなります。
水は「飲料+調理+衛生」で考える
飲む分だけでなく、アルファ米の戻しやカップ麺、歯みがき・簡易洗浄にも水は必要です。目安は1人1日3リットル。調理不要のメニューを混ぜることで水と燃料の消費を抑えられます。
非常食セットに入れておきたい基本アイテム
非常食セットをすぐ使える形にするには、中身をカテゴリーごとに分けておくのがコツです。普段のキッチンではなく、持ち出しやすい場所にひとまとめにして、家族にも位置と使い方を共有しておきます。
食品(主食・副菜・補助食)
・主食:アルファ米、レトルトご飯、パン缶、クラッカー
・副菜:レトルト丼、パウチ惣菜、インスタント味噌汁、シリアル用ミルクパック
・補助:栄養補助バー、チョコ、ドライフルーツ、ナッツ
水・加熱・食器
・水:2リットルボトルと500ミリの両方を混在させると配布や携行がしやすいです
・加熱:発熱剤セット、小型固形燃料、ライター、耐熱袋
・食器:紙皿・紙コップ・割り箸・ラップ(皿に敷けば洗い物を減らせます)
ここまで準備できたら、あとは家族構成に合わせた調整です。乳幼児や高齢者、持病のある方、アレルギーのある方がいる場合は、専用メニューやとろみ調整、低アレルゲン食品を必ず追加します。常備薬や粉ミルク、ベビー食品、介護食は一般セットとは別のボックスにして取り違えを防ぎましょう。
家族構成別・非常食セットの組み方
非常食の正解は家庭ごとに異なります。食習慣やアレルギー、歯の状態、調理余力によって「食べられるもの」が大きく変わるためです。以下の例をベースに、味の好みを1割分だけ「ごほうび枠」として入れておくと継続しやすくなります。
一人暮らし・最小限セット(3日分)
主食6食、汁物3、レトルト3、栄養バー6、水9リットル、発熱剤1セット、紙食器一式。調理を最小にし、片手で食べられるものを多めにします。
子どもがいる家庭・安心セット(3〜7日分)
主食は味つきアルファ米やカレー、子どもが食べ慣れたスティックパン。口どけの良いゼリー飲料、ミルク飲料、常温保存できるヨーグルト風味飲料を追加。水は多めに確保し、アレルゲン表示を必ず確認します。
買う前にチェックしたい「5つの選定ポイント」
非常食セットはパッケージの豪華さより、日常で回せるかが決め手です。次の5点を見れば、失敗の多くを避けられます。
1 期限:最長年数だけで選ばず、期限がバラけない構成を。更新の手間が減ります。
2 調理性:水・火・食器が不要な比率を必ず確保。停電直後でも食べられます。
3 表示:アレルゲン、栄養成分、原材料のわかりやすさ。家族で共有しやすいものを。
4 容器:小分けパウチ中心だと持ち出しも配布もしやすいです。
5 価格:一度に揃えるより、普段食の買い足しで「ローリングストック」に切り替えると無駄が出ません。
ローリングストックで「使いながら備える」
非常食セットはしまい込むほど劣化し、存在を忘れがちです。普段の買い物に「保存が利く主食や惣菜」を加え、食べたら同じ数を買い足す循環にすれば、常に新しい備蓄が維持できます。月に一度は非常食だけで一食つくる「訓練日」を設け、味や量、調理手順を見直すと非常時の戸惑いを減らせます。
見直し・更新サイクルのコツ
・更新日は家族の誕生月や季節の変わり目に固定
・箱の外に期限を大きくメモし、古い順に前へ
・食べにくかった商品は次回別銘柄に差し替え
職場・学校・車内のセットも忘れない
災害は通勤・通学中にも起きます。各場所で半日〜1日分の食料と水、モバイルバッテリー、簡易トイレやウエットティッシュを用意しておくと、帰宅困難の際に大きな安心につながります。車内は高温になるため、夏季の品質変化に注意し、短いサイクルで入れ替えましょう。
すぐ使える「1人×3日」標準パック例
主食6(アルファ米3、レトルトご飯2、パン缶1)。おかず6(レトルト丼2、パウチ惣菜2、ツナ缶2)。汁物3(味噌汁3)。間食6(栄養バー4、チョコ2)。水9リットル。発熱剤1、紙皿10、ラップ1、割り箸10、スプーン10、ウエットティッシュ1、ビニール袋数枚。これを人数分積み増しし、玄関横や廊下収納など取り出しやすい位置に置けば、非常時にすぐ配布できます。
まとめ:続けられる仕組みが最強の非常食セット
非常食セットは豪華さより「続けられる仕組み」が命です。人数と日数から逆算し、食べ慣れた味を中心に、調理不要の比率を高めて水と燃料を節約。ローリングストックと定期点検で、常に最新のセットに保ちましょう。家族ごとの事情を反映したボックス分けと、職場や車内のミニセット追加で、どんな場面でも「今日から生き延びられる」備えになります。
